2011.10.15 更新
最近の気象は、台風を含め、異常気象が局地的に発生する傾向が見られています。
このような状況の中においても、安定した稲作栽培を行うためには、その基盤となる水田を健全な状態にしなければなりません。
そのために、水田の土づくりが大切で、優良な土は、活力ある根をつくり、稲体の健全な生育、穂の充実、登熟歩合の向上(粒の充実)をもたらし、高品質の米生産に必要です。
したがって、水稲が成熟期まで健全に生育できる環境を作るために、堆肥や土づくり肥料等を施用して、地力の増進に努めましょう。
昔から水稲は、地力で作ると言われていますが、近年は、環境の変化と労働力不足によって水田に施用される堆肥が減少し、化学肥料の使用による栽培が行われています。
なぜ有機物の施用が地力を高め、化学肥料は地力を低下させるのかといいますと、化学肥料の多くの場合、窒素、リン酸、加里の三要素に限られているため、微生物の活動が制限され、土は次第に固くしまってくるのに比べ、有機物、特によく腐熟した堆肥は三要素の他、ケイ酸、石灰、苦土、硫黄、鉄、マンガンなど作物の生育に必要な養分を含んでいる上に、土壌中の生物活動が活発となり、土が軟らかく、作物に根が伸びやすくなるからです。(表)
したがって、地力の維持増進に有機物の施用は欠かせないのです。最も一般的で、広く行われているのが、稲ワラの還元です。冬季の期間にすき込むに当たって、ワラ1tに対して石灰窒素25㎏程度添加すると腐熟が促進します。また、牛ふん堆肥の場合は冬季に1t程度を施します。
表 水田の土の働きと改善方法
肥料の三要素と有機物の施用以外に、必要な養分を供給する必要があります。
水稲は、10a当たり玄米600㎏生産するのにケイ酸を120㎏程度吸収します。稲作期間中に灌漑水から供給されるケイ酸量は約20㎏、土壌等から供給されるものが、約40㎏であり、残り60㎏が不足することになります。これを補うには700㎏の稲ワラか200㎏のケイカルを施用する必要があります。しかし、実際に稲ワラやケイカルのケイ酸も100%水稲に吸収されるわけではないのです。そこで、ケイカルの施用量200㎏を毎年冬季に施用します。
秋落ち水田、老朽化水田、排水不良水田の土壌改良は、主に鉄の供給を目的に行います。ミネラルGを10a当たり200㎏施用します。
ミネリッチは、ミネラルGに加えて、リン酸(溶燐)とカリ肥料(ケイ酸加里)を混合したものです。その他に、とれ太郎やマルチサポート2号があります。
有機物にかわる有機質資材として、アヅミン(腐植酸苦土肥料)があります。アヅミンは、腐植酸を多量に含むため、少量の施用で、肥効増進、根の活力増進に役立ち、施用量は10a当たり30~40㎏程度で施用します。
水稲の生育過程において、生育前期の生育は旺盛にもかかわらず、後期に生育不良となって、下葉の枯れ上がりが多くなり、ごま葉枯れの斑点を生じ、穂も小さくて収量が意外に上がらない現象の水田を言います。
作土層から、またその下のすき床層からも鉄が強度に溶脱されており、また、マンガンも溶脱されて鉄より下の層に沈殿し集積している水田を言います。
営農部 酒井 啓
広報誌「なごみ」2011年10月号掲載
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